2020年6月29日にサービス開始3周年を迎えた『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(以下、『ミリシタ』)。3周年を記念して実施した、伊吹翼役のMachicoさんのインタビューをお届けします。

※本インタビューは2020年6月上旬に行いました。

Machico(まちこ)

3月25日生まれ、広島県出身。声優だけでなく、アーティストとしても活躍。近年の出演作は『ライフル・イズ・ビューティフル』(小倉ひかり役)、『ウマ娘 プリティーダービー』(トウカイテイオー役)など。

『ミリシタ』Machicoさん(伊吹翼役)インタビュー。「もしかしたら、私がいちばん翼に手玉に取られているのかもしれません(笑)」_02
『ミリシタ』Machicoさん(伊吹翼役)インタビュー。「もしかしたら、私がいちばん翼に手玉に取られているのかもしれません(笑)」_01

背中を追いかけてきた翼と肩を並べともに歩む

――まずは翼との7年間を振り返っていただきたいのですが、オーディションを受けた当時のことは覚えていらっしゃいますか?

Machico私は『ミリオンライブ!』が声優としてのデビュー作なんです。だからオーディションもほとんど経験がなかったので、すごく緊張しました。じつは翼ではなくて春日未来ちゃんを受けていたんですよ。自分でイラストを描いたり、未来ちゃんの性格を分析してオーディションに臨みました。

――気合が伝わってきますね。翼役は、オーディション中に勧められたのでしょうか?

Machicoそうなんです。ひと通り演技が終わった後「(最上)静香と翼もやってみてほしい」と言われ、さらに翼については「未来でやったのと同じ演技で」とリクエストがあって……。私の中で翼は“ボーイッシュな女の子”というイメージがあったので、違う演技を指定されて「えーっ?」ってちょっと混乱しちゃいました(笑)。後で考えるとすごく勉強になったのですが、当時は終始緊張しっぱなしで頭グルグルのまま終わってしまった感じでした。

――翼役が決まった時はどんな気持ちでした?

Machicoアイマス』のような大きなコンテンツに、まだ駆け出しの私が受かるとは思っていなかったので、すごくうれしかったです。じつはある勘違いをしていて、その時点では、そこまでプレッシャーを感じることなく役に臨めたのもよかったかもしれません。

――勘違いとは?

Machico未来、静香、翼で“信号機トリオ”と呼ばれたりすることがあると思うのですが、最初のうちは翼がそんな中心メンバー的な存在だと知らずにいたんです。

――なんとぉー!(笑)

Machicoミリラジ』(※1)のパーソナリティが未来と静香と(箱崎)星梨花の3人だったので、ずっとその3人が中心のメンバーなんだろうなと思っていました。そんな私が真実を知ったのは、なんと2014年のSSA(※2)での合同ライブ(※3)だったんです。

※1……2013年に放送が開始されたインターネットラジオ番組『アイドルマスター ミリオンラジオ!』のこと。
※2……埼玉県さいたま市の“さいたまスーパーアリーナ”の略称。
※3……2014年2月22日~23日開催の“THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014”のこと。リポートはこちら

――それはまた……ずいぶん経ちましたね(笑)。

Machico舞台の袖で出番を待っているときに、はるにゃん(※春日未来役の山崎はるかさん)が「やっと“信号機”が3人揃ったね!」と声を掛けてくれたのですが、私は「何のことを言っているんだろう?」と意味がわからずキョトンとしてしまって。そうしたら、はるにゃんが「“信号機”は私たち3人のことだよ!」って教えてくれました。

――出番直前で知る衝撃の事実!

Machico本当に「えーっ!?」って感じで(笑)。おかげで急激なプレッシャーに襲われながら、ステージに立つことになりました。

――そんな中のステージはいかがでしたか?

Machico思わぬプレッシャーはあったんですが(笑)、先輩たちといっしょにレッスンができたこと、ステージに立たせていただいて最後までやり切れたことが、すごく自分自身の自信や成長につながったと思っています。

――レッスンではどんなことを?

Machicoひとつひとつ言葉で教えてもらったわけではないのですが、レッスンに臨む姿勢を間近で見てきました。ひとつ思い出に残っているのは、あるレッスンで先輩方がいて『シンデレラガールズ』の皆さんもいて、『ミリオンライブ!』では私とゆいトン(横山奈緒役の渡部優衣さん)しかいなかったというときのことです。まだ私もゆいトンもそれほど親しくなくて、ジャマにならないように隅っこのほうでしずしずとダンスの練習をしていたら、釘宮さん(※水瀬伊織役の釘宮理恵さん)が声を掛けてくださったんです。「後ろにいたらあなたたちがダンスの確認ができないでしょ。私たちはこの曲を何回もやっているし、失礼じゃないから私たちにかまわず鏡の前に出て、自分たちの動きを見ながらやったほうが覚えやすいと思うよ」って。

――そんなことを言われたらグッときちゃいますね。

Machicoまだコンテンツとして日が浅い『ミリオンライブ!』なのに、ちゃんとひとりひとり見てくださって、声も掛けてもらえるんだと思ったら、すごく温かいなとジンとしちゃいました。先輩後輩関係なく、みんなで一丸となって盛り上げていこうという気持ちがすごく感じられて、そこで自分が『ミリオンライブ!』だけじゃなく『アイマス』というコンテンツ全体の一員なんだという思いが強くなりましたし、心持ちが変わったと思います。

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――この7年のあいだで翼への気持ちや接しかたについて、変わったことはありますか?

Machico7年前は、何もかもが経験不足で、天才肌の翼に何とか食らいついてやる……という気持ちでやっていました。でも、アフレコやライブなど、演技も歌もダンスもいろいろな経験を積んできて、ようやく後ろから追いかけるのではなく、対等の立場で翼のいいところを引き出していこう、というところまで来られたと思っています。

――何でもできる翼だからこそ、追いかけるのはたいへんだったのでは?

Machicoむしろ、翼がそういうキャラクターじゃなかったら、私もここまでがんばれなかったかもしれません。自分が苦手な分野でも、翼を輝かせられるように人一倍努力しなければいけない、というモチベーションができて克服できたと思っています。

――そんないま、Machicoさんにとって翼とはどんな存在になっていますか?

Machicoどんな困難なミッションが与えられたとしても、翼のためなら何だってできる……それくらい、大切な存在です。

――翼を演じるにあたって、とくに気を配っていることはありますか?

Machico14歳という年齢特有の“まっすぐさ”を忘れないようにしています。翼は、相手を掌で転がそうとするじゃないですか。でも、それがあざとくなったら翼じゃないですよね。振る舞いそのものはあざといかもしれませんが、それを意識して振る舞っていないのが翼なんです。そのバランスは、ずっと気を付けていることですね。私も「もっとかわいく感じてもらうにはどうしたらいいだろう?」といつも考えていて、毎回いろいろなことを試してみたりするのですが、スタッフの皆さんもわかっていて、やり過ぎると「ちょっと違う」と言われてしまうんですよ。だから、いまも日々研究を重ねているところです。もしかしたら、私がいちばん翼に手玉に取られているのかもしれません(笑)。

――『ミリシタ』では、ストーリーもいったんリセットされ再スタートとなりましたが、そこで演技を変えたところはありますか?

Machicoプロデューサーさんとの関係性もリセットされたので、当初の翼に戻すのはたいへんでした(笑)。演技のプラン全体も少し見直していて、甘え上手なところと気の抜けた感じをやり過ぎない程度に強調しています。3Dでモーションが入ったのも大きいですね。「このセリフのときはこの動きをしているんだろうな」と想像しながら演技しています。

――Machicoさんご自身、この7年間の活動の中でとくに印象に残っているライブは?

Machicoひとつ挙げるとしたら3rdライブです。37人が参加しての初めてのツアーでした。このころは、私が作り上げてきた翼のイメージが、逆に翼の可能性を狭めてしまっているんじゃないかと悩んでいた時期でもあります。これまでどんな曲でも“翼の声”で歌ってきたし、歌によって感情がぶれないようにもしてきたのですが、それが本当に翼らしさだったのかと思うようになったんですよね。翼だって感情的になることも、地声ではないキーで歌うこともあるはずですし。どうやったらもっと翼を成長させられるんだろう。その悩みは公演を重ねていくごとに膨らんでいきました。

――翼と長く付き合ってきたからこその悩みなのかもしれませんね。

Machico3rdライブではほかにも、先輩(765プロオールスターズ)のカバーコーナーがあったりして、たくさんのプレッシャーに押しつぶされそうになっていたと思います。そんな中でファイナルの幕張公演を迎えることになったのですが、そこでミンゴスさん(如月千早役の今井麻美さん)を始めとした先輩からアドバイスをいただいたり、それまで自分の内面と向き合ってきたことで新たな発見がありました。

――先輩方からはどんなアドバイスがあったのですか?

Machicoたとえばミンゴスさんには、翼として千早の代わりに『アライブファクター』を歌うことについて相談に乗っていただいたのですが、まず「“代わり”という考えは捨てなさい」と言われました。それから「先輩たちをリスペクトしてくれるのはうれしいけれど、それはあなたが演じるアイドルの可能性を狭めてしまうことになる。それはもったいない」と。その言葉で私自身も大きく成長できましたし、私が勝手に築き上げたイメージでいつしか狭めてしまっていた、翼の可能性を解放できたと思っています。

――大きな転換点だったのですね。

Machico幕張ではみんなで力を合わせて公演を成功させたことで、それまで「翼さえ輝ければいい」という思いもどこかにあったのですが、仲間の絆や、皆に支えてもらっていることをあらためて体感できたと思っています。

※3rdライブ幕張公演のリポートはこちら

――その後のライブで、具体的にどう変わっていったのでしょうか?

Machico3rdライブの後は、ほかのアイドルの子たちとも翼としてぶつかれるようになった、という実感があります。ハッチポッチ(※4)でアッキーさん(星井美希役の長谷川明子さん)と『マリオネットの心』を歌ったときも、翼なら憧れの美希ちゃんと歌えてうれしいと思いながらも、そこでさらなる高みを目指すはずと、より強い気持ちでステージに立つことができました。それは、ひとりじゃなく仲間がいて先輩がいて……『アイドルマスター』というコンテンツだからこそ、得られた引き出しだと思っています。

※4……2017年に日本武道館で開催された“THE IDOLM@STER 765 MILLIONSTARS HOTCHPOTCH FESTIV@L!!”のこと。Machicoさんが出演したDay2のリポートはこちら

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――5月には新たな試みとしてリモートをフル活用した生配信(※5)も行われました。

Machico私も家モードのリラックスした状態で、内心「このテンションで大丈夫なんだろうか?」と思いながら出演していました(笑)。そんな私たちの姿が、プロデューサーさんたちにとっても新鮮だったのではないかなと思います。それにしても、あんな形で全員参加ができるんだと驚きましたし、チャットでもみんなの本性が見られておもしろかったです。それも7年間で築いてきた関係性なのかもしれませんね。今後もやってほしいと思いました! 

※5……2020年5月23日~24日配信の“MILLIONSTARS特別生配信~手作りのThank You!~”のこと。

――チャットでの皆さんのはじけぶりには驚きました。

Machico私が出演していない1日目も観ていたのですが、チャットでは香里ちゃん(桜守歌織役の香里有佐さん)や南ちゃん(白石紬役の南早紀さん)もすっかり溶け込んでいて、とくに「お前が優勝だ!」という南ちゃんのコメントは爆笑でしたね。今回、トークパートに出演したのは各日3人でしたが、もっとほかのメンバーたちにもキャラクター愛を語ってほしいなと思いました。プロデューサーさんたちも観たいと思ってくれるでしょうし!

――今後、またライブが開催できるような状況になったらやってみたいことはありますか?

Machicoもっとキャラクターの映像といっしょにステージに立ちたい気持ちもありますし、小岩井ことりちゃん(天空橋朋花役)たちがよく言っている“飛ぶ”みたいな舞台的な仕掛けにも挑戦してみたいです。あとは何と言っても『ミリシタ』のテーマでもある“劇場”でやりたいですね。香里ちゃんや南ちゃんも加わりましたし、初心に返って挑戦してみたいと思っています。

――歌織や紬が加わって52人になった『ミリオンライブ!』ですが、Machicoさんのお気に入りのアイドルを挙げていただけないでしょうか?

Machico(百瀬)莉緒姉は好きですね。ああいうどこかホンワカしたところのあるお姉さんが好きなんです(笑)。『ミリシタ』になって、3Dで動くようになったこととか、りか姉(百瀬莉緒役の山口立花子さん)の演技もバージョンアップされたこともあって、よりそれを強く感じるようになりました。現実世界でも、ゆいトンとかゆきよさん(所恵美役の藤井ゆきよさん)がそうですよね! ただキレイなだけじゃなくて。そういうわけで、莉緒姉はダメっぷりも含めてすごく好きなキャラクターです。

――同じくお気に入りのユニットは?

Machico夜想令嬢(※6)です。キャストからの人気はナンバーワンなのではないでしょうか。私もカラオケに行けるようになったら、みんなに『昏き星、遠い月』を披露してやろうと準備を続けています。もちろん、ひとりで4人ぶんのパートを歌い分けて(笑)。『ミリオンライブ!』ではなかったタイプのユニットでしたよね。衣装もストーリーもよかったし、女子の心に刺さりまくったと思います。

※6……『ミリシタ』に登場するユニット“夜想令嬢 -GRAC&E NOCTURNE-”のこと。メンバーは二階堂千鶴、天空橋朋花、百瀬莉緒、所 恵美の4人。

――では、『昏き星、遠い月』のほかに好きな楽曲をひとつ挙げるとしたら?

Machico(食い気味に)『fruity love』です! 私、初めて出たときからずっと推しているんです! コミュもよかったですよね。劇場の中でもとくにキャラクターの濃いふたり((野々原)茜、ロコ)の不器用さが描かれていて、真っ正面からぶつかりながら、友人としてアイドルとして成長していく姿がたまらなく愛おしくて。それで私自身も「歌いたいんです!」とラジオを始めさまざまなところで言い続けて、振付けも自分で覚えて「個人練習ナシでも大丈夫です」とアピールを重ね、6thライブでようやく念願が叶った(※7)ときはうれしかったです。

※7……2019年9月20日、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!! SPECIAL”DAY1にて、 “りるきゃん ~3 little candy~”דJelly PoP Beans”のメンバーのひとりとして『fruity love』を歌唱した。リポートはこちら

――CDが出てから約3年半、ついに、でしたよね。

Machicoでも、ただ「Machicoが歌いたがっていたから歌わせてあげたよ」というだけでは私も満足できなかったと思います。6thライブでは、茜とロコがあのぶつかり合いを経て、それぞれが所属する、りるきゃん(※8)とジェリポ(※9)、それぞれのユニットを導き合わせて歌わせてくれたものだと思っているので、本当にあの形でよかったと、心から感じています。あの後、よくプロデューサーさんたちからも「Machicoよかったね」と言っていただけるのですが、「いや、Machicoがよかったとかじゃなくて、あのふたりが連れてきてくれたんだ。そのことに価値があるんだ。それをわかっているのか!!」と私は言いたい! これがいま皆さんに強くお伝えしたいことであります(笑)。

※8……『ミリシタ』に登場するユニット “りるきゃん ~3 little candy~”のこと。メンバーは篠宮可憐、野々原茜、伊吹翼の3人。
※9……『ミリシタ』に登場するユニット“Jelly PoP Beans”のこと。参加メンバーは、ロコ、舞浜歩、永吉昴、周防桃子の4人。

――アツいですね! あともうひとつ、今後ユニットを組んでみたいアイドルを挙げていただけないでしょうか。

Machico茜やロコもそうなのですが、名前を挙げればイメージがパッと浮かぶようなアイドルと組んでみたいですね。たとえば、(天空橋)朋花ちゃんとか(徳川)まつりちゃん。彼女たちは“聖母”や“姫”とか、すぐキャラクターを表す言葉も浮かんできますよね? 翼は万能である分、そういうものがないので、彼女たちと組むことによって翼がどうなるのかを見てみたいです。また新しい扉が開くかもしれません!

――新しい扉という意味では、翼は『アイドルマスター スターリットシーズン』への出演も決まっていますね。

Machico765プロでの翼はああいう立ち位置なので、「ほかの事務所のアイドルたちとどう絡むんだろう?」とか、「どのアイドルと同じカテゴリーに分けられるのだろう?」という化学反応が楽しみです。もう収録も始まっているのですが、そこで「翼ってこんなにマジメになれるんだ」と彼女の見慣れない姿を発見できてうれしかったです。開発中の映像を少し見せていただいたのですが、「噴水とかの水しぶきがすごいなぁ」と思いました(笑)。表情も多彩だし、映像もめちゃくちゃ綺麗で。あとは『シャニマス』のアイドルが3Dで歌って踊っている姿が初めて見られて感動しました。

――発売が楽しみです! それでは最後に、プロデューサーさんたちへのメッセージをお願いします。

Machico残念ながら7thライブは中止になってしまいましたが、メンバーは未来を見据えてがんばっているので、また同じ空間で同じ時を楽しめる日はやって来ます。私は7年間翼といっしょにいろいろな壁を乗り越えてきましたが、『チュパカブラ』(※10)のように『ミリシタ』は何をしでかすかわからないコンテンツなので(笑)、また皆さんをいい意味で裏切れるようにがんばっていきたいと思います。今後とも応援よろしくお願いします♪

※10……2020年5月27日に『ミリシタ』の新楽曲として実装された『DO THE IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~』のこと。

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